本展は稲越功一氏が1993年に発表した作品集「Ailleurs」に再注目する個展として当初企画されていました。
しかし前年の2009年1月、残念ながら稲越氏は亡くなってしまいました。
キュレーターの太田菜穂子さんは、過去に目を向ける企画から、稲越功一が現在へと引き継がれ今も生きているという企画に練り直しました。
そして稲越氏と彼を継承する5人の写真家たちによるグループ展となりました。

少し遡って2008年、4月から稲越功一氏の専属スタッフになることが決まっていました。
それまで自分本位に好き勝手生きてきた僕は、アシスタントに専念するということがどうしても受け容れられなくて、2月頃、稲越氏に「覚悟を決めるため自分の写真を撮る時間を下さい」とお願いをしました。しかも「海外に行きたいので1ヶ月欲しいです」無理な話だというのは分かっていました。
流石に驚かれましたが、結局1ヶ月近い休暇をもらって、ドイツ各地を巡りました。
帰国後は業務で忙しく日々を過ごしながら、心の拠り所として少しずつプリントをつくり続けましたが、稲越氏に見せることもせず発表の機会も持ちませんでした。
プリントがパンパンに詰まった分厚いバインダーを事務所の作業机の脇に置いたまま、1年近く経過していました。

そのバインダーを太田さんに手渡した数日後、5点が選ばれ、出品することになりました。

稲越氏とひと繋がりの壁に並んでしまうことに少なからぬ罪悪感がありました。でも太田さんの計らいでこのような機会を得て、稲越氏と自分の写真とを同一線上に解釈していただいたこと、生前は不義理をしましたがしっかりと光の当たる展示空間で稲越氏にお見せできたことを心から感謝しました。あそこまで無理を言ってドイツに飛び出した自分のどうしようもなさも間違ってなかったかもしれないと、やっと思えました。

AILLEURS
遠い場所2010 終わらない旅の軌跡 稲越功一と5人の写真家
2010年10月19日〜11月28日
curated by KLEE INC PARIS TOKYO
作品制作協力 キヤノン株式会社
特別協力 稲越敬、yellow Inc.、GI.P.Tokyo